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佐々木ラジヲン
佐々木ラジヲンはどこまでが本当の話か嘘なのかわからない。
八戸の小中野の飲み屋の女、ありゃえがったなあ三晩泊ってきたじゃ。
乳はあまり大きくなく手にすっぽり収まり腰は瓢箪のようにくびれ
声は鈴のような泣き声、打てば響くとはあんな女のことだべ。
誰かのうけうりのようだがそんなのは関係なく僕らは
こんな話は口からよだれを垂らし頭から湯気があがり
その次はどうヤッタ早ぐ、はやぐと話の続きを催促するのだった。
佐々木ラジヲンのこだわり方
ラジオ作りにはまり今ではでっかいスピーカーが自慢の作であり
そこから出る重低音は窓ガラスをビリビリ震わす。それがいいのだそうだ。
なんでも中学校のとき学校へラジオを持ってきて先生に取り上げられ
それからあだ名は佐々木ラジヲン。
佐々木ラジヲンは僕らより3つ年上で学校の先生が教えてくれない女の
秘密ことをいかにも、もっともらしくそのことを体験したかのようおもしろおかしく語る。
僕らはその話を聞きたくて佐々木ラジヲンの家へ遊びに行く。
佐々木ラジヲンの部屋は雑然とし煙草の吸殻や酒の空瓶で異様な臭いがする。
スピーカーやら作りかけのアンプ
この真空管は東京の秋葉原から取り寄せたpc−139で性能がよくもっともいい音がでる。
といいベートウベンのなんとかかんとかの有名な
曲のレコードだから心して聞くようになんたらかんたら
のウンチク。
やはり佐々木ラジヲンである。
佐々木ラジヲンの世界は独特のステータスをもち我々をひきつける魅力があり音楽のことを熱く語る。 |
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僕はこの空間が好きだった。自分が持っていない大人のような世界
もう少しで手がとどきそうで子供ではない背伸びした自分、佐々木ラジヲンが
教えてくれた女の秘密の園、僕らはこうしてだんだんと大人になってゆく。
佐々木ラジヲンは中学校を卒業して地元の小さな会社に就職したあと東京へ出て高度成長の波
に乗り自分で会社を立ち上げ一時はいいときもあったがそのあとの不景気
で倒産しその後はわからない。うわさでは上野駅でホームレスの姿を
した佐々木ラジヲンを見かけたとか。
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