ふるさとの山に向かいていふことなし古里の山はありがたきかな本文へジャンプ
つまご屋のさくらんぼ
佐藤錦、南部町便り
佐藤錦、安美錦、
さくらんぼ
青森県南部町はつまご屋の田んぼからタニシを獲った
私がコレステロールを管理するわけ
古里の南部町と馬淵川と名久井岳そして達者村
わらで縄をなう
うまいまるごと普代海産祭り
師走る人々
めがね的愚考生活
南部町のえんぶり
阿房宮(食用菊)
の里・南部町
不思議な謎にセマル、目からうろこの物語
食べ物の記憶
湊朝市
あのなっす・さろん
ヤギのちっち
ジャガイモの味と夏休みカッパになる
西女
南部町のいいところ
芸術のことはよくわからない
えんぶりの神様
昔、むかしの豆しとぎ
ベゴ(牛)とだだ(父)とワ
(私
)と
想い石
味噌は手前味噌
佐々木ラジヲン
六月のヘリコプター
爆発するルネッサンスとお祭り
正月
正しい初夢の見方、白蛇の存在
さげじょの夜
十二支のオトシ子
旅はみちずれ、または股ずれ世は情け、踊る阿呆
旅の函館、かからん
ケツ(房総編2)
支えられて人になる
(房総編3)
絆をつなぐ(房総完結編)
ふるさと南部町りんごのかまり

八戸湊朝市ぶらぶら武士

ふるさと南部町りんごのかまり
八戸湊朝市ぶらぶら武士
かえるの漂着、木枯らし吹く秋の終わりの旅人よ
男蝉、女蝉
えんぶり考
盆にはぞうりがいい
稲穂を拾う人
郵便配達人
母の靴下
蕎麦とネギと国道
104号線
古里の秋祭り
剣吉かいわい
ざわめく心
芳川さん
ふるさとのかまりをかまりたくて


ふるさと南部町りんごのかまり


  ふるさと南部町りんごのかまり

ふるさと南部町には、かまりがある。りんごのかまり、母のかまり

 父の煙草のかまり、においのことを南部地方ではかまりと言う。


   ふるさと南部町には11月にかならず帰る。

りんごのふじが赤く色つき収穫できるころ母へ電話する。

 りんごもぐに行ぐ。母はこの電話を今か今かと待っては

いるものの自分からなかなか言い出せないのがわかっているから僕

の方から連絡をとる。

 母はりんごが赤く色づくころ


「来るな、来るな。くれば、金かがるし、おめえもたいへんだ、

一人でなんとかなんべせ」

 と言う母は気丈な一面を見せるが 裏を返せば来てほしい、の願望なのだ。

僕はますます帰りたくなる、かまりをかまりたくて。


一人になった母はりんごを収穫するのは大変な重労働なのだから

 りんご作りはやめたらいいのに、と思うがそれが生きがいだから言い出せない。

りんご作りの作業で一番忙しいのは収穫の時期、30kgもあるりんご箱を畑から

家まで軽トラックで運び蔵の中へ入れ5段6段と積み上げなければならず、もう大変な

重労働なのだ。それに11月になると初雪がちらほらと降りてきて

急いでほっかむりをしても体がブルッブルッと震える。


 父の一周忌は田植えの終わるころ


三反五畝余りの田をなでるように耕し

田の仕事はな〜「手間、合間、昼間 からやいでばわがねんで

やませ風、吹いたら水ばぬるいの入れろ」が父のくちぐせ。

三反五畝余りの田は父の命。

 ふしくれだった指、しわがれた声

まるくなった後ろ背中はモノ言わぬ化石。

それでも母のお酌のとたん顔がクシャクシャになり上機嫌で

 村で一番、米を出荷してるとごろあ、オラほだ

母は「んだ、んだ、そのとうりだ」とあいづちを打つ。


40になり二人の子供に恵まれ親の気持ちが解る年代になり亡くなって想う

親の心や哀しさを理解してやれないあの頃、この父や母を捨て遠くの東京は

父や母を忘れ華やかに、おもしろおかしく暮らす日々は父や母

 が田植えをしてることも、りんごもぎをしていることも想いやれなかった。


      この父としみじみと語り酒を酌み交しかった


うん、うん、それから、どうした〜ああ、大変だったなあ〜

   父や母が生きた証を僕はこの身に受け止めたかった

 父は僕の相槌に満足げにうなずき母が作ったどぶろくを僕の湯飲み茶碗につんだ。

そばにいる母は菊の花を茹でながら

早ぐ、寝んで、お前はたくさんに酔ってらと言って夢の中の母は微笑んでいた。






























 











 


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指が曲がった職人