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ざわめく心
稲荷沢から吹く風が優しくさらい、みよ子の髪をなで
心、おどり胸は張り裂け、みよ子の唇は微笑み手は暖かく
リズム軽やかに彼女の汗は胸につたい心ざわめく。
それは母や姉の匂いと違い、女を感じる。
みよ子のそれは十七、八の小娘と違い優しく包み込み溺れる。
朝のみよ子の背中を見つめうつら、うつらの覚えのなかで一指し指でみよ子の背骨を
押し数を数えるのが好きだ。
みよ子は肩をすぼめ、くすぐったいからやめろといいう。
朝のひと時はゆるやかに流れ陽の光の窓がふたりを照らし、まどろみの中のみよ子
の髪、口、手、声を感じる。
みよ子のくちびる、笑顔、足のくるぶし
みよ子のひとつ、ひとつの面影を忘れない。
村の青年団の集まりでみよ子が男と、ひたしげに談笑しているのがきにいらない
五月になれば、みよ子にあえる、田植えの時期になればきっと会える。
それまではここで我慢しねばならねえ。
ざわめく心は風のうわさ、出稼ぎにでてから一年、今ごろは雪もとけて
蕗の蕩が芽をだしているころ、みよ子は電話にでない。
出稼ぎ仲間は、飲め、飲め、みよ子のことは忘れろ
おまえのほかに好きな男がいるんだ、あきらめろ。
ざわめく心のわびしさよ、酒と仮の女とざわめく心
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