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剣吉かいわい
川村鍛冶屋のおじさんがフイゴを吹き、すす焼けた手で鉄を打つ音
斜め向かいの不二や食堂の50円学生ラーメン
有金商店のせんべい。有金商店の向かいの剣吉座
西舘製材所が木を挽くモーターのうなり音
剣吉かいわいには活気に満ちた人々のにぎわいや生活の足跡があり
昭和の懐かしくも豊かな暮らしに満ちた人々の営みがった。
剣吉小学校の坂をくだります。
陸橋を降りると剣吉かいわいにでます。陸橋手前、左は下斗賀、右は上町にいきます。
剣吉小学校の坂をおりたらまず、工藤菓子店のショウウインドウのケーキをややしばらく眺め、あきらめがついたら
100メートルぐらい歩くと踏み切りがあり森越へいく道と上町、下斗賀へいく道がありボクの家は下斗賀ですから
左に折れます。
すると左がわにはパチンコ店、映画館、右がわには有金商店、相前文具店
映画館は剣吉座といい映画もやりますが地域の青年団の芝居がおこなわれます。
あの頃きていた映画は白いマントに白いバイク頭にターバン、額にミカズキ、その名も我らの英雄、月光仮面
月光仮面の看板をみては急いで家に帰り風呂敷を首にまき自転車を乗りまわしてました。
しばらく歩くと「あさみずちゃやこ」駄菓子屋さんでバッタ(めんこ)やビー玉もおいてありました。
ビー玉やバッタの図柄をみながら店を一回りして出ます。
するとT字路があり左にいくと新開地、もうちょと行くと剣吉駅でその向かいは川又商店、酒屋です。
剣吉駅をすぎると不二屋のソバ屋、学生時代のあのころ部活が終わり腹が空いて食べた学生ラーメン。
その向かいにあるのが川村鍛冶屋
曇りガラスのレールから外れそうになった戸をガラガラ開けると黒く煤けた作業場、そこは
大きな鋤や鎌など壁に寄りかかる。奥のほうからラジオの音がかすれた音
まもなく夕暮れ日のヒカリがボクの顔を照らし・・・空と透きすまされた雲のあいだのひかり。
音が鳴る、この音が安らぎのボクは暗闇と星の輝きの子供のように思う。
闇びとが星を照らすように現実と空と雲がひとつになる
剣吉駅は心のふるさと、ふるさとは遠くにありいつまでも
日々の生活に疲れ、どうしようもなく、この現実から逃げる。
少年に戻り新幹線に乗りふるさとへと向かう。
会社の終業を終え足は自然と東京駅へと向かい、やがて新幹線に乗っている。
八戸駅でおり在来線に乗る。苫米地駅や諏訪の平駅。
剣吉駅を降り立つころは夜も更け雪がちらほらと頬につたい誰もが無口で足早に家路へと急ぐ。
遠い思い出のように剣吉駅の階段を一歩ずつ踏みしめ学生のころの白い息をはきながら。
遠くの思い出は甘くほろ苦くやがて消えるしゃぼんだま。
消える雪よ、そのままでいておくれ、あのころの雪のように。
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