さげじょの夜
10月の中ごろ夕方が寒くなり稲刈りが終わりよしえばっちゃが蝶々になり
「寒ぐなったすけ布団かげでけろじゃ」と言ったころ
おとな達は、さげじょで子供の知らない不思議なことをする。
黒い服を着たおとな達は、よしえばっちゃを取り囲み輪になり呪文をとなえ鉦を鳴らし
玉がいっぱい付いた数珠を回し大きな玉が来るとぺこりと頭を下げるのであった。
隣に座って一緒に数珠を回している四つ上の兄に
ばっちゃ、なして動がなくなったのよ。と聞くと、
ばっちゃな、死んで蝶々になったのせ、あそごにいだ、ばっちゃは蝶々の抜け殻なのせ。
子供はあの大きな玉が自分の番に回ってくると厳粛な気持ちになり、念仏ばあ様が唱えるナンマイダ、ナンマイダ
が薄暗いさげじょに響き、よしえばっちゃの枕元のろうそくの炎と線香の煙のゆらゆらをウツロな
瞳で見つめてる子供は、よしえばっちゃが寝てる布団の中に潜り込み昔語りを聞くのが好きだった。
さげじょ
その場所は村の中心にある大きな建物で今日はつまご作りの作り方、年寄りからる伝わる
つまごの編み方は代々受け継がれ、それぞれワラを持ち寄りつまご作りに励む。
そんな寄り合いの場所をさげじょといった。
作業所はなまってさげじょ
さげじょの夜はよしえばっちゃの念仏講
その手で優しく触れる念仏講
よしえばっちゃの手は暖かく蝶々になって飛んでゆく。
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