南部藩発祥八〇〇年余その想いを馳せて摺(す)る、南部町のえんぶり
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遠くの山(名久井岳)が雪を背負い寒さが身に凍みる1月下旬、
えんぶり宿、げんき館
から聞こえてくるのは笛や太鼓や手ビラがねの音。
南部町は下斗賀えんぶり組と下斗賀こどもえんぶりの練習が始まったのです。南部町のえんぶりは
八戸市のえんぶりより早く2月6,7日、八戸市のえんぶりは2月17〜20日までです。
南部藩発祥八〇〇年余、えんぶりは南部地方に根ざし脈々と受け継がれ、大地を耕し、五穀豊穣を
祝う、その舞、摺るという、南部町に伝わるえんぶりはどうさいえんぶりで
激しく摺り、人々の心をゆさぶり春を呼びおこす。 *20年ぐらい前はえんぶりを練習する
場所をえんぶり宿といい個人の家で練習していました。
まず先太夫が松の葉と扇をしっかりにぎりしめ、ヤイヤイと申しますればこのえんぶりが参って候
前に千刈り、後に千刈り、併せて三千刈り、アー良い苗しろ所、と言って口上を申し上げる。
田の畔を越え勝手に田んぼの中に入るのは許されない、挨拶をしなければ
田の神様に申し訳がたたない、そうして初めて三人の太夫が摺り始める。
下斗賀えんぶり組の唄は、摺り初め、中の摺り、摺り納め、の三部となり、あいだに子供のよろこび舞
が入り場を盛り上げ最後は後太夫がお礼の言霊を申し上げる。
下斗賀えんぶり組えんぶり唄・摺り初め
正月のな〜やい、ど〜さい松の葉をば、やい手に持ちて
ど〜さい、ようおおなる、な〜やい、物がえ、(は〜よいわさ〜、あ〜こりゃ)
どさい太郎次えが女房は〜やい作業する、どさい種を何石やいお〜ろしで
どさい雀うめしらずのはやあわせ、(は〜よいわさ〜、あ〜こりゃ)
どさい代しきのやい代の馬どさい誰にさせをやいとらせる
どさい花婿にやい取らせる(は〜よいわさ〜、あ〜こりゃ)
どさい苗取り側のやい、中の瀬で
下斗賀えんぶり組えんぶり唄・中の摺り
これの旦那様、今盛り、ど〜さい四方の角に倉たでで
ど〜さい今は、御所のやい、盛りで、(は〜よいわさ〜、あ〜こりゃ)
どさい田の神のやい館は、ど〜さい何でそうじを飾るで
ど〜さい松の若木の雌鳥で(は〜よいわさ〜、あ〜こりゃ)
どさい田の神にやい、ござる橋、ど〜さい何橋をやい架けましょう
ど〜さい金のそり橋架けましょう(は〜よいわさ〜、あ〜こりゃ)
どさい田の神にやい、お膳は何膳ばかりやい揃えた
ど〜さい九十九膳やい揃える(は〜よいわさ〜、あ〜こりゃ)
どさい田の神のやい昼休み
下斗賀えんぶり組えんぶり唄・摺り納め
苗代田のな〜やい、水口に、ど〜さいつぼおが花がやい咲く花が
ど〜さい咲けば長者になる花か、(は〜よいわさ〜、あ〜こりゃ)
どさい夕暮れをやい、い出見れば、ど〜さい前田の稲もやいそよめく
ど〜さい前田の稲もやい刈り上げた(は〜よいわさ〜、あ〜こりゃ
どさい踊るな駒にやい乗り揃えで(は〜よいわさ〜、あ〜こりゃ
ど〜さい跳ねるな駒にやい乗り揃えで
ど〜さい馬場くらにやい、めされで(は〜よいわさ〜、あ〜こりゃ
どさい門殿のまげしは良いまげし、ど〜さい、い出こじたをはだいで
ど〜さいこんじゃぐ、じゃぐどやいはだいで
ど〜さいこんじゃぐ、じゃぐどやいはだいだ
下斗賀えんぶり組・畔止め
最後の締めは後太夫の口上である畔止め、畔をしっかり止めないと田んぼから水が抜けてしまう。
一 あ〜良く植えて申したりやい、大らずもしかり小らずもしかり四方四又からすっぽりこと
植えて申したりやい よーよー
二 この十二人の早乙女子の名を申しますれば、鶴子に亀子に千ざい子、万ざい子
手踊り茶釜にちゃくさんこ よーよー
三 この早乙女子は若早乙女子でおんどけまって、じゃれまってなまぐろ
なんじょ、ふなたぎて よーよー
四 年寄りは年寄役に従って、上畔から下畔まで、下畔から上畔まで、けらん虫も
通さぬよう、すっぽりこと生めてもうしたりやい よーよー
五 秋になったら三束三ばに、三石三斗三升三合三斥ありますようお祝い
ください旦那様