秋時雨だべよん
もうすぐ小寒、大寒が岳からやってくる前に人々は秋じまいを急ぐ。
秋になれば日も短く、里へ帰るカラスも古巣へと急ぐ。
稲穂をひろう人は額の汗を拭うまもなく陽が暮れ一握りの穂を大事に抱え
道ゆく人にあえば頭をふかぶかと下げ家路に急ぐ。
稲穂を拾う人
の田は二畝。二畝では家族五人の食い扶持を賄いきれず大家の許しをえて
一町歩の稲刈りで落ちこぼれた稲穂をひろう。
米が命の綱渡り、百姓殺すにゃ銭いらぬヤマセと年貢米あればいい
稲穂をひろう人は運命だとか宿命だとか考えたことはない、それが不幸だとか
哀れむだとか不憫だとか・・・ただ今日の稲穂のおかげで歳老いた母が粥を食えるのと
乳がでない妻の代わりに稲穂のとぎ汁を幼子に飲ませることができればいいのだ。
はあ、岳みれば山っこの下がら、ちょこっと
雲あ、出はたと思ったきゃ、もくもくと大きくなったおん。
雪なんだべがあ〜、しぐれだべが〜、へでも、そったらに寒ぐねしけ
秋時雨だべよん
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